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なんとなく、クリスタル読了

この小説は田中先生の初著書である。

田中先生が大学生4年生の時、思わぬ留年で時間を持て余している時に書いたもの。

「今の時代の若者を描いた小説が無いので書きたい。」という先生の意思の通り、登場人物はその時代を生きる大学生。

正にその当時の先生自身と同世代の若者の話である。

そして、この小説の最も特徴的な点が膨大な量の注釈である。

全ページ見開きの右は文章、左は注釈で構成されている。

注釈には「ターンテーブル」等の名詞からお店の紹介、アーティストやアパレルブランドの解説迄に及ぶ。

そして、この注釈からこの本の、いや先生の本質が分かる。




博学であり、洒落た事全般が大好き。もっと平たく言えばとことん拘りとことんお洒落なナイスガイである。

主人公の「ユリ」はモデルのバイトをしながら学校に通い、服や飲食、クラブでの遊びを楽しんでいる大学生である。

この華やかでアクティブな生活習慣と考え方がこの時代で有り、クリスタルなんだろう。

物語自体はそんなに大きく動く事はなく、クリスタルな彼女の生活の一部をくり抜いた様な話である。

そしてこの小説は注釈を含めこの時代の若者を知る為の資料と捉える事も出来る。

時代感と先生の美的感覚を知り、味わい、インプット出来たのが大きな収穫かなと思ってる。

ただ、小説としてとても評価が高く大きな賞をとったり、ガルシア・マルケスが生きていたら次はこんな小説を書いていたであろう。と評されたりしている。

僕自身の読解能力の低さと読書経験の浅さ故まだ感じ取れてない部分が大きい気がする。

最後にひとつ。1番頭に残っているのはユリがクラブで声をかけられた男とのベッドシーン。細かい描写から脳内にダイレクトに描が浮かびドキドキした。素晴らしい表現力だ。

何はともあれ、より経験を積んだ状態で再読したい本である。